まっさらなところに新しい秩序を作って、これまでにないことをするというのは、そう簡単なことではありません。実際には、まっさらな領域に、他のところから持ってきた秩序を変形させて、原理は同じでも、従来とは違う方式で行うというのが一般的です。

歴史的に見ると、画期的に見える革命的な変化も、かつてあったものの変形、あるいは再構成というべきものだといわれます。当然ながら、変形し、再構成する人は、かつて存在したものをそのままなぞるわけではありません。それは逆に難しいでしょう。

意図した変形や再構成の中に、知らないうちに意図せざるものが入り込みます。結果として、そうなるということです。大切なのは、独創的であろうとするよりも、成果を上げようとすることでしょう。そして成果の上がるものなら、独創的な要素が評価されます。

  

目的をもって迅速に習得する知識は、どうしても必要なものですから、効率的な習得に価値が置かれます。これは具体的な活用に結びついたものです。無駄を少なくしないといけません。この場合、他にない独自の知識の習得には、まずならないでしょう。

一方、自分の好みに合わせて、興味のある分野を調べたり、自分で考えたりするうちに、その分野の専門家になってしまうことがあります。自分の仕事に活かそうという目的を持って勉強するのとは、また別の、ある種の贅沢なアプローチもあるでしょう。

好きに選んだものでも、高レベルなら通用します。新しいことをする場合、従来と違うコンセプトや、アプローチが必要です。高レベルのものなら、知らないうちに、こうしたものが入り込みます。何が必要か予測できませんから、好きなことをやるのも大切です。

  

これからは知識領域が広がり、各分野での知識の高度化が進みます。個人に依存する分野が増えることが確実です。この分野を専門としているのは誰であるかを、組織の側も評価できなくては困ります。各人の強みを知ってこそ、活かせるからです。

ギリシャ哲学の講義を聞いたとき、「無知の知」という話が出てきました。自分はよくわかっていないと自覚していることが重要なのだということだったかと思います。よくわからないことを、わからないと言えなくては、困ったことになるのは間違いありません。

人間は万能ではありません。負荷をかけすぎて緊張させてしまうと、力が発揮できなくなります。専門家と扱われた人が、知らないと言いにくい雰囲気を作らないようにする努力が重要です。個人依存が高くなるからこそ、気をつけないといけなくなります。

  

人間があるべき姿を描くとき、どんな方法をとるものでしょうか。価値観が絡みますから、簡単に標準化はできないかもしれません。しかしたぶん、ある種の標準的な方法があるはずです。例えば組織ならば、困ったことの解決が目的になります。この点は共通です。

すでに「困ったこと」という共通の価値観がありますから、それを展開していくことになります。まさに共通基盤でモノを考えるということです。おなじ前提を置いて、会話が成立する条件を整備すれば、広い領域での標準化が可能になることでしょう。

あるべき姿から、具体的な行動に至るまで、必要最低限のルールに基づいて、組織は標準形態を作っていく必要があります。業務の標準化によって、そこで発生するノイズが小さくなるのです。いかに的確で快適な形態を構築できるか、組織の能力が問われています。

  

マネジメントというのは、現状をあるべき姿にするための方法というべきものです。IT分野の人ならば、おなじみの「AsIs」と「ToBe」という言い方があります。現状の「AsIs」をあるべき姿である「ToBe」に変えるという発想は一番基本的なものです。

あるべき姿を描くためには、どういうことがよい姿なのか、価値観が問われます。各人の良心に従って、かくあるべしということを考える…ということです。まずは「こうあるべき」ということを明確に定義していくことが必要になります。

「こうあるべき」…が明確なら、その達成方法は、いずれ見出されるものです。そうすれば実践に移せるでしょう。達成方法が妥当なものならば、結果が「こうなるはず」だ…と予測が可能になります。妥当な達成方法を生み出すものが、マネジメントです。

  

新しい働き方として、ジョブ型の人事を進めようという話があります。実際に成功した事例が、ほとんど聞こえてきません。成功事例が少なすぎます。当然かもしれません。日本の組織で、ジョブ型人事が成功させるのは、簡単なことではないと思います。

私たちは、一つ一つの業務…つまりはジョブを定義してきませんでした。だから、ジョブの定義から始めなくてはなりません。しかし、ジョブをどう定義したらよいのでしょうか? 最初から的確な定義はできないでしょう。でも、ここから始めるしかありません。

なぜか? 今後、ジョブ型の人事が不可欠になる組織が出てくるはずですから。世界トップ水準を狙う組織なら、プロフェッショナルな仕事が不可欠だと気づくはずです。そういう人に仕事を任せる場合、ジョブの定義は基礎になっています。

  

デジタル技術が標準化されていくと、便利な機能が簡単に利用できるようになります。それを社会が獲得すると、その中で標準化の競争が進んで、共通基盤が形成されてくるでしょう。利用が容易になり、社会の基盤として機能してくることになります。

そのとき付加価値をつけるのが人間の役割です。共通基盤を使って、何を生み出すのかが問われます。自分なりの工夫をこらした創造によって、社会性を獲得する何かを提示できるのかが問題です。

自分の得意な領域を活かして創造し、成果を検証していく。大きなものも、小さなものも、それが欲しいという人がいたら、ビジネスになります。中核となる創造は、個人が担う時代になりました。あなた、私、あの人、一人一人がキーマンになる時代です。

  

先端的な技術に無関心ではいられません。必要なら、最先端の技術を導入して成果を上げる決断が必要です。気を引き締めて第一歩を踏み出しましょう! 挑戦には失敗が排除できないという洞察から、再び立ち上がれるだけの準備を整えて…ということになります。

その前に…、失敗の要因を事前に除去しておくことが前提条件です。
失敗の最大要因は、おそらく基礎力の欠如です。当たり前のことが当たり前にできるようになっていないと、先端のものは活かせません。基礎なき先端は、末端ということです。

挑戦の前に、問うておかなくてはいけません。
「基礎となるものは、何でしょうか?」
「基礎となるスキルを身につけているでしょうか?」