仮説を作るときに、ある種のプロセスがあります。「仮説→実行→検証」という流れです。まずは頭で考えて、実行できる形にしたものを、実践して、その反応から仮説の正しさを評価すること。より良いものへと修正していく仕組みと言ってよいでしょう。

仮説ですから、正しいとは言い切れません。失敗のリスクも低くないでしょう。そうなると、小さく始めるしかありません。ささやかで着実な実行が重要です。このとき、検証が大切になります。検証とは、どうすることか? 測定して比較することです。

あるべき姿と比較するには、指標が必要になります。定量化したり、水準到達を判定する測定方法と基準が必要です。しかし絶対的な判定方法や基準がないので、間違えます。それでも測定し続けるしかありません。この試行錯誤が、仮説を成功に導く鍵になります。

ビジネスにおいて、大きな変化の一つが、徐々に明らかになっています。従来よりも、一人の力の影響が大きくなっているということです。圧倒的なアイデアがあれば、それを実現できる可能性が大きくなりました。アイデアを評価できるのか、それが問題です。

組織で多数決にかけたアイデアは、しばしば平均的なものになって、大きな成功をおさめることはまれでしょう。多数のアイデアの中から、圧倒的な成果を上げるのは、尖がっているものと、相場が決まっています。それを組織が採用できるかどうかが問題です。

たいてい新鮮なアイデアというものは、少人数の集団や、個人から出てきます。それを促進して、いいものを見出せる組織が強い組織でしょう。アイデアを歓迎し、いいものが採用できる仕組みが作れるかどうか、これが組織の基礎力というべきものだと思います。

  

目的と目標は違うものです。目的には、価値観が入ります。「なぜそれをするのか」という問いに対する答えが、目的と言えるでしょう。個人も組織も社会的存在だからこそ、社会から承認される行動指針が必要です。それはいいねと、思ってもらえないと困ります。

とはいえ最初から、そんな話はできそうにありません。まずは仕事が継続できるように、おかしなことだけはしないようにして、収益を上げていきます。そこから始めて、段々、社会から承認されるように、その方向に向かっていく。それが自然な流れでしょう。

かつてピーター・ドラッカーが一番大切な質問をあげていました。「あなたは、どんな存在だと、人々から記憶されたいのか」というものです。今後の指針を考えるときに、役に立つ質問でしょう。あるべき姿を、どう描くのか、この質問がヒントになりそうです。

   

日本がグローバル化したのは、そんなに昔のことではなさそうです。1987年にトヨタ自動車が北米進出してケンタッキー工場を作ります。その頃、アメリカの自動車市場で強かったのはGMとフォードでしたから、車を作った経験者はトヨタになど来てくれません。

日本での作業手順を導入し、アメリカ人従業員とのやり取りを通じて、業務マニュアルを整備していったようです。その結果、アメリカでも高品質の車が作れるようになりました。そのときの工場長が張富士夫さんです。1999年にトヨタ社長になっています。

2001年、トヨタウェイを策定。2004年頃には、世界2位のフォードにあと一歩のところまでに達しました。あのトヨタでも、グローバル化してから、まだ20数年とも言えます。可能性のある会社が、日本には、まだたくさんあるはずです。大いに期待しています。

  

日本がものづくりで世界を席巻したことがありました。1980年代から90年代のことです。ピークを打ってから、だんだん本音が語られるようになりました。日本の電機メーカーの幹部が、アメリカの企業幹部から、穏やかに辛辣な指摘を受けた話があります。

日本のモノ作りは素晴らしいと思ったと…過去形での話です。部品まで圧倒的な作りこみで、これでは到底かなわない、お手上げ状態だと感じたということでした。ところが、一つの規格ができると、その中では本当に完璧だけど、そこから踏み出していない…と。

日本の構想力が思いのほか弱いことに気づいたとのことです。日本が圧倒的だった1985年に、アメリカではヤングレポートが出され、知的資産を重視する方向が示されました。構想力で勝負しようとしたのです。いまの日本で必要なのは構想力だろうと思います。

  

近代的な産業社会は分業を大切な方法としてきました。仕事をするときに、たった一人では限界がありますから、この分野はどの人たち、この分野はこの人たちと、分業が成立します。各分野でトレーニングを積めば、その人たちにはノウハウが蓄積されるはずです。

各分野ごとに、強みを持った領域を担当する人たち、あるいは集団ができてきます。強みを組み合わせるのですから、一人で全体をなすよりも有利なはずです。多くの場合、いまでも有利な点が多々あります。しかし必ず有利とは言えません。全体の統合が大切です。

ベルトコンベヤー方式よりも、セル方式の方が品質の良いものができることがあります。分業を進めるほど良くなっていくわけではありません。役割分担をどうしたらよいのか、ビジネスでは大切なポイントです。全体を把握して、意識的な分業が必要になります。

  

組織で、共通の方法で何かをする場合、ルールを決めることになります。しかし、たいていの場合、ルールの提示で終わりです。本当に守れるものかを冷静に考えなくては、困ったことになります。無理なく守れる仕組みを作っておくことが大切です。

逆にいうと、仕組みがあって、それに沿っていけば、ひとりでにルールが守られていくような仕組みになっていれば、負担感が軽減されます。よい仕組みが作られるならば、作業効率は間違いなく上がります。こうした仕組みづくりが遅れがちなのです。

例えば、必要事項をすべて記述しないといけない場合、定型書類の項目をすべて埋めたなら、必要事項が満たされるフォーマットになっていれば、確認作業が楽です。電子化したものなら、機械的にチェックもしてくれます。こうした工夫の余地がありそうです。

  

若い時の勉強の仕方というのは、なぜかコツコツというのをよしとしていた気がします。毎日、学校から帰ると、少しずつ参考書の勉強を続けて、何か月かかけて、一冊の定番の本をマスターしましたといった話がありました。それは素晴らしいことかもしれません。

しかしビジネス人が、同様の勉強方法をとるべきでしょうか。そもそも定番の本がない場合もあるでしょう。そのほうが多いかもしれません。そうなると、コツコツ勉強する前に、その本が学ぶべき価値を持つかどうか、カンでも何でも判定しなくてはなりません。

学ぶべきだと思ったら、一気に読みあげることが必要になります。休みの日に、一日仕事のつもりで、数百ページの本を読み終えるのです。全体を見て本を再評価してから、学び直すのが実践的でしょう。ビジネス人が勉強しようとしたら、こうならざるを得ません。

  

入社3年目の若者が、業務改革の担当になりました。自ら望んでのことではありません。なり手がないので、一番の若手に押し付けたようです。最初に何をしたらよいのかさえ分かっていません。相談に来ました。まず必要なデータ項目を確認するように言いました。

業務の水準を測定するために、どんなデータが使えるのか、その確認が必要です。3ヶ月かけて必要項目をピックアップしたと、また若者がやってきました。会社が上場する準備を進めています、どうすればよいかわかりません…と。業績の測定方法が必要です。

標準的な測定方法がありますから、データがそろっていれば、簡単な数式が導き出されます。どこから手をつければ効果が大きいかも、数式自体が教えてくれました。あれから数か月で、明らかな効果が出ています。次は何か? 組織の仕組みを変えることです。

  

仕事を定義しようとして、様々な役割をピックアップしていた人たちがいました。この人たちが、どうもしっくりこないと言い出して、相談にいらっしゃったことがあります。各人の役割を規定しても、なんだか仕事が把握できないという感覚があったようです。

役割分担という言い方があります。それは言葉では、その通りですが、役割が重なることがめずらしくありません。立場が違っても同じ方向を見ていく必要がありますから、微妙な重なり合いとも言えます。しかし、それを厳格に定義しようとするとズレるのです。

まず現在の仕事をプロジェクトとして捉えたらいかがでしょうか。プロジェクトの進捗にどう関与するのか…と考えたほうが実態に合うはずです。仕事はある種のプロセスをたどります。プロジェクトの発想なしに役職やその役割を考えるのは、無理があるでしょう。